P01-人間は生まれながらの死刑囚/パスカル「死より確実なものはなく、死期より不確実なものはない」(パスカル) フランスの哲学者パスカルは、「人間は考える葦である」 の言葉で有名ですが、自らも物事を徹底的に考え抜いた人でした。 彼の著作『パンセ』には、次のような言葉があります。 「すべての人間は幸福になることを求めている。これには例外がない。そのための手段はいかに異なっていようとも、彼らはみなこの目的に向かっている。これはあらゆる人間の、自ら首をくくろうとする人々に至るまでの、あらゆる行為の動機である」 ところが、現実の人間はみな空しく、その空しさをまぎらわすために、常に気晴らしを求めている、と彼は言います。 ではなぜ、人生はそんなに空しいのでしょうか。 「多数の人々が鎖につながれ、死刑を宣告されているさまを想像しよう。幾人かが日ごとに眼前で絞め殺され、残った者は、自分たちも同じ運命をたどることを悟り、悲しみと絶望の中で互いに顔を見合わせながら、自分の番がくるのを待っている。これが人間の状態なのである」
考えてみれば、わかりきったことです。しかし多くの人は、この厳粛な事実から目をそむけているのではないでしょうか。 パスカルにとって、死は最大の関心事でした。 来世(死後)の幸福に何の光ももたない者にとっては、幸福は存在しない、とまで述べています。 キリスト教の信仰によって死を克服しようとしたパスカルですが、残念ながら最期の言葉は、 「願わくは神よ、私をお見棄てになりませんように」 というものでした。 ドイツの哲学者ニーチェは、 「自滅し、絶望したパスカル」 と評しています。
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