H02-生きながら心の死んでいる者がいる/吉田松陰

「世の中には生きながら心の死んでいる者がいる」(吉田松陰)

幕末の志士・吉田松陰が高杉晋作に教えた言葉。
「その身は滅んでも魂の存する者もいる。生死を度外視して、なすべきをなす心構えが大切だ」
と、つづきます。

「松下村塾」で多くの若者に思想的影響を与えた彼は、江戸幕府に危険人物視され、投獄の身となりました。

死刑を宣告され、白洲から出てくるところを、同じ志士の世古格太郎が目撃、こう書いています。

「吉田もかく死刑に処せらるべしとは思わざりしにや、彼縛らるる時まことに気息荒く切歯、口角泡を出す如く、実に無念の顔色なりき」


「その身は滅んでも魂の存する者もい
る。生死を度外視して、なすべきをな
す心構えが大切だ」(吉田松蔭)

死を覚悟した松陰にも、実際の処刑はやはり恐怖だったのでしょう。29歳でした。

しかし彼の死後、薫陶を受けた多くの若者たちの活躍で、討幕は果たされ、日本は新しい時代を切り開いていくのです。

維新の立役者・西郷隆盛も言っています。

「命もいらず、名もいらず、官任も金もいらぬ人は、始末に困るもの也。此の始末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり」

人間、命かけてでもやらねばならないことがあるのです。

見渡せば現代、なんとなく生きてはいても、人生を本当に生きているとは言えないような人も多いのでは。

自分が何者かを知らず、生きる目的も分からず、うつろな視線で漫然とただ生きている……そんな人達を松蔭は、「生きながら心の死んでいる者」と、言いたかったのではないでしょうか。