L06-積極的精神は何のために?/中村天風

「人生において大切なことは、積極的精神である」(中村天風)

中村天風なる人物は、一般の知名度は低いものの、松下幸之助、倉田主税(日立製作所元社長)、大仏次郎(作家)ロックフェラー3世ら、各界に信奉者をもつ思想家です。

没後の今日も、彼の教えは全国の多くの経営者、政治家、学者らの精神的支柱となっていると言われています。

彼は、「人生に成功するための極意」として”積極的精神こそ幸福の源”と主張しました。

人生のすべてが、この積極的精神で決定されるのだ、とまで言い、平素から、

「できうる限り努めて、気分を明るく朗らかに、生き生きとして何事にも応接することを忘れないようにせよ」

と説いています。

「想像力を応用して、心に念願する事柄をはっきりと映像化することによって、絶えざる気持ちでぐんぐん燃やしていると、信念がひとりでに確固不抜なものになる」


中村天風は、積極的精神こそ幸福
の源、と言った。
これが今日、多くの経営書にみられるポジティブ思考の原点でしょう。

しかし、積極的に、前向きに生きることは、もちろん大切ですが、では、人生で一番大切なことは何でしょうか。

多くの人生論や識者がいうところも、煎じ詰めれば、

「頑張って、積極的に、明るく生きよ」

ということですが、しかし、

「どこに向かって」
「何のために」

と問うたら、答えはないのです。

「目的なんか、ないよ。とにかく何にでも積極的に」

というのでは、手段と目的をはきちがえた迷見と言われて、返す言葉がありません。

おそらくは誰よりも積極的だった秀吉の臨終が「夢のまた夢」であり、家康の人生が「重荷を背負うて遠き道をゆくが如し」だったのは、何を物語るのでしょう。

これこそ、全人類の抱える大矛盾ではありませんか。

「人生の目的を知らずに百年生きるよりも、出世の本懐に向かって一日生きるほうがはるかにすぐれている」

釈迦の言葉です。